2015-01-01から1年間の記事一覧

海からの贈り物(塩の話)

海からの贈り物 友人から強く勧められて、『クリスマス島 海の塩の会』に入会した。入会金の千円を振り込んだら、丁寧な礼状と五百グラムほどの塩が送られてきた。それまで、塩は何のこだわりもなく、化学的に処理された食塩を調味料として使っていたのだが…

風と共に・・・

『風と共に・・・』 長谷川 静 中身より字の大きさで選ぶ本 有料老人ホーム協会のシルバー川柳入選作品だ。これは然り、私も、特に目を患ってからは、大活字本コーナーで選ぶ。また、本の厚さや重さも選ぶ要因だ。さらに書店で購入するときは値段も重要な要…

ああ、無情

ああ無情 「お客様、パスポートと航空券を拝見します」 若い女性のグランドスタッフの声。 「はいはい」返事より早く右手が伸びる。 姉妹都市提携三十周年記念事業でニュージーランド(NZ)のネィピア市を訪れる市民訪問団に加わった私は、朝、一行四六名の一…

子別れ

苫小牧に住み始めて二年目の夏、北海道の臍といわれる大雪山にでかけた。大雪山といっても、ひとつの頂がある訳でない。主峰は旭岳(2291メートル)で、いくつかの峰々が連なる連山であり登山愛好家にとっては格好の縦走コースだ。近年は、表玄関が旭岳…

IKADA

クラスメートの男子二人の様子が変だった。授業が終わるや、勇んで教室をとびだしていく。 計画を練って綿密に準備をするような彼らではないのに、柄にもなく地図を持ち出したり、天気を気にしていた。何か突飛なことを目論んでいるに違いない。決行する前日…

みのり

昨年の春、桜が散ったころに父は彼岸へ旅立った。去年から追悼文集やアルバム作りをしながら父のことを懐かしく思い出す。同居もしていなかったので、いつもは頭から離れていたくせに、もう居ないのかと思うとたまらなく悲しい。 享年九十七歳、家族のために…

もの・もらい・・・

父が中年になって、糖尿病を患っていた。合併症も見られなかったから母の食事制限の苦労や生活管理が大変だったのも知らず、高齢期になっても元気な父を見てたいした病気じゃないと、侮っていた。 私が糖尿病が怖い病気だと認識したのは、アメリカ映画「マグ…

みちゆき

『木曾路はすべて山の中である。あるところは 岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり・・・一筋の街道はこの森林地帯を貫いていた』 島崎藤村の長編小説、『夜明け前』の冒頭の文章だ。 私は、この文章に魅かれて旧中…

涙ぐむ眼

今年も9月14日がめぐって来た。苫小牧から1時間半、穂別の富内、風にそよぐコスモスと豊穣の波、大きな虹が山間にアーチをかけて歓待してくれた。賢治観音堂にいくと、今年は初代の横山村長の37回忌だそうで、札幌に住む娘さんがご主人と参っていた。穂別…

私と音楽 

私が生まれたのは、戦後間もないころで、家は昭和の始めから、映画館を経営していた。敗戦で疲弊しきった人々にとって娯楽の中心は映画だった。町で唯一の館は押すな押すなの大盛況で、映写技師以外の仕事は祖母や母も手伝っていた。赤子の私は、母に背おわ…

しーちゃんの夢

孫娘、ハンナとのたわいもない会話は楽しい。 「しーちゃんの夢はなあに」 唐突な質問に私はうろたえた。思わず 「ええ!忘れちゃった」 「どうして忘れちゃったの?」 「眠っているうちに夢を食べる怪獣のバクに全部たべられちゃったのよ」 「私が聞いてい…

黄落のとき

シルバーウィーク,両親に会うために帰省した。故郷は甲府盆地の南端に位置し、富士川の河岸にある市川大門町。中世以来の和紙生産と江戸時代からの花火の産地であり、夏の神明の花火で知られる。その町に94歳の父と89歳の母が妹夫婦に助けられながら肩を…

蝉 苫小牧の市街地に住んでいた去年の夏は、蝉の声など一向に気にならなかった。ところが今年は関東の南に居るせいか、それとも記録破りの暑さで蝉が大量発生したのか、耳を劈くばかりの蝉の大合唱に閉口した。『蝉時雨』は夏の季語だが、連日の蝉の合唱は、…

蝉 苫小牧の市街地に住んでいた去年の夏は、蝉の声など一向に気にならなかった。ところが今年は関東の南に居るせいか、それとも記録破りの暑さで蝉が大量発生したのか、耳を劈くばかりの蝉の大合唱に閉口した。『蝉時雨』は夏の季語だが、連日の蝉の合唱は、…

人生の勝負服

NHKの朝ドラ『カーネーション』を日課のように観ていた。ファッションデザイナー、小篠綾子さんをモデルにしたストーリーだ。綾子さんには、亡くなる半年ほど前に、私が関わっていた女性の会主催のト−クショー「肝っ玉かあさんの一代記」に出演していただ…