2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

IKADA

クラスメートの男子二人の様子が変だった。授業が終わるや、勇んで教室をとびだしていく。 計画を練って綿密に準備をするような彼らではないのに、柄にもなく地図を持ち出したり、天気を気にしていた。何か突飛なことを目論んでいるに違いない。決行する前日…

みのり

昨年の春、桜が散ったころに父は彼岸へ旅立った。去年から追悼文集やアルバム作りをしながら父のことを懐かしく思い出す。同居もしていなかったので、いつもは頭から離れていたくせに、もう居ないのかと思うとたまらなく悲しい。 享年九十七歳、家族のために…

もの・もらい・・・

父が中年になって、糖尿病を患っていた。合併症も見られなかったから母の食事制限の苦労や生活管理が大変だったのも知らず、高齢期になっても元気な父を見てたいした病気じゃないと、侮っていた。 私が糖尿病が怖い病気だと認識したのは、アメリカ映画「マグ…

みちゆき

『木曾路はすべて山の中である。あるところは 岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり・・・一筋の街道はこの森林地帯を貫いていた』 島崎藤村の長編小説、『夜明け前』の冒頭の文章だ。 私は、この文章に魅かれて旧中…

涙ぐむ眼

今年も9月14日がめぐって来た。苫小牧から1時間半、穂別の富内、風にそよぐコスモスと豊穣の波、大きな虹が山間にアーチをかけて歓待してくれた。賢治観音堂にいくと、今年は初代の横山村長の37回忌だそうで、札幌に住む娘さんがご主人と参っていた。穂別…

私と音楽 

私が生まれたのは、戦後間もないころで、家は昭和の始めから、映画館を経営していた。敗戦で疲弊しきった人々にとって娯楽の中心は映画だった。町で唯一の館は押すな押すなの大盛況で、映写技師以外の仕事は祖母や母も手伝っていた。赤子の私は、母に背おわ…

しーちゃんの夢

孫娘、ハンナとのたわいもない会話は楽しい。 「しーちゃんの夢はなあに」 唐突な質問に私はうろたえた。思わず 「ええ!忘れちゃった」 「どうして忘れちゃったの?」 「眠っているうちに夢を食べる怪獣のバクに全部たべられちゃったのよ」 「私が聞いてい…